現在ターン 1
こんにちはっ!
こちらは一人用TRPGの第3話です。
第2話から続いていますので、
まだの方はそちらから遊んで下さいね。
第3話は第2話の終わりに登場した
新しい「あなた」――
『二人目』を主役にした物語です。

『二人目』は物語の中で『一人目』と
一緒に行動します。


連携を使って『一人目』の
キャラクターシートも使いますから、
用意してくださいねっ!

連携回数
『一人目』:3回






それでは『二人目』の
キャラクターシートを
作りましょう!
今回もヒントがありますよ。
そのいち、
今回は「知識」が重要ですっ!


そのに、
今回のシナリオでは激しく動けません。
オーラ3以上、ライフ2以上の攻撃は
ペナルティがあります。
練度は同じく3が標準です。
さあ、次なる「あなた」はできましたか?
できたらさっそく、桜降る代の冒険を
はじめましょう!
ライフ=5 オーラ=3
フレア=1 ダスト=5 間合=0


あなたは桜降る代に住まう
ミコトの一人だ。
腕前も確かだが、
何よりもその見識が自慢である。
そんなあなたの下に
ひとりの人物が訪ねてきた。


『一人目』だ。
なんと驚くべきことに
千洲波の駐在地に
入り込んできたらしい。
見知った人物ではあるが、
相変わらず無茶なやつだ。


そしてそこで見たものについて
あなたの知識を頼りに来たようだ。


しかしその内容はあなたですら
判断できないものであった。
謎のメガミ、奇妙な装具、
それに刻まれた文様。……
だが、うろ覚えではあるが、
桜花拝宮司連合の書庫で
近しい文様を見た覚えがある。
意識して見れば分かるはずだ。
書庫は蟹河にある。
ここからならば遠くはない。


他ならぬあいつの頼みだ。
それにあなた自身、
この謎に心惹かれている。

そうしてあなたは『一人目』と共に
蟹河へと向かったのだった。


蟹河の書庫に辿り着いた。
道中は問題なかったと
言ってよいだろう。

ここには桜花拝宮司連合が
管理する貴重な書物が
数多く揃っている。

桜花拝は神座桜や桜花決闘を
管理する桜降る代の一大組織だ。
かつては主神ヲウカの名の下に
一枚岩にまとまっていた。
だが今――桜降る代においては
武神ユリナによる新たな桜花決闘と
それを支えるホノカ、ウツロの二柱という
体制への見解が組織内で分かれている。
彼女らの在り方を支持する派閥、
彼女らを操作しようとする派閥、
主神ヲウカの復活を目論む派閥……
まあ、小難しい組織の話は今はいいか。
本旨に戻ろう。
この書庫の門戸は貴重さに見合う
ほどには閉ざされており、限られた
人物しか入場を許されていない。
あなたほどに知識面における
名声があれば問題はないだろう。
しかし『一人目』は駄目そうだ。

二人そろって入るには、
伝手を辿るほかないだろう。


精神判定:難易度10
適切:説得


あなたたちは縁を上手く辿り
円滑に書庫へと入ることができた。


交渉は中々うまくいかず、
時間がかかってしまった(ターン+3)
しかしどうにか
書庫へと入ることができた。
ここが蟹河の書庫だ。
膨大な蔵書量に圧倒される。
書庫は広く入り組んでおり、
屋敷とも表現できるほどだ。
あなたたちはその中を進む。
どこか騒がしく、普通でない空気を
『一人目』がかぎ取った。

不幸にも「何かしら」が起きている
途中に入り込んでしまったようだ。
だが、直ちに問題が起きるわけではない。
あなたはあなたの目的を果たそう。
さて、まずは何から調べようか。



この地の各地にまつわる
風土記を調べてみようか?
文様に関する記録が見つかる
かもしれない。
人々の知る限りにおける
メガミ全体の歴史を調べようか?
謎のメガミもメガミの一柱だ。
記録があるかもしれない。
桜花決闘の歴史を
調べてみようか?
人とメガミの関わりといえば
やはりこれだろう。
あるいはこの書庫そのものを
調べてみるのはどうだろう?
何せ桜花拝の書庫なのだから、
何か隠されていても納得できる。
人を頼ってもいいかもしれない。
書庫に勤める知人へと、
今の状況を尋ねておいたほうが
動きやすくはないだろうか。
さて……(ターン+2)



次は何を調べようか



「待てい。そこの貴様」



あなたが書庫を探索していると
一人の老人が話しかけてきた。
老人は神経質な様子で
あなたを睨んでいる。
「今、この書庫は偉大なる
 メガミ様方をお迎えしている。
 部外者の入場は許可していない」

偉大なるメガミ様と称す割には
吐き捨てるようなその口調には
敬意の欠片も感じられない。

「儂は正村正吾。
 この書庫の管理を偉大なる
 ヲウカ様より任されておる。
 直ちに出て行ってもらおう」
老人は有無を言わさず、
あなたたちを追い出した。


この男は桜花拝の有力者だ。
力ずくもここでは無理である。
流石にお尋ね者は御免だろう。

ゲームオーバー



いや待て。
周囲を警戒するように、
小さな精霊が飛んでいる。
メガミかミコトの力によるものだ。
見つかると面倒そうだ。
どうにかやり過ごせないだろうか?


技巧判定:難易度12
適切:体捌き


何とかなったようだ。
探索を続けよう。


駄目だ、見つかった。
仕方ない。報告される前に
撃ち落としておこう。

何とかなった。
探索を続けよう。


どの地方を調べるべきだろうか。



北限に関する古い文献は多くはない。
だが、後年の調査や口伝の書き写しから
彼らは北を守るためにメガミに仕え、
深い信仰のもと生きてきたと分かる。
信仰は古くは挑戦の逸話であった。
人々の一部は北の果てへと冒険し、
それはメガミへの挑戦に他ならなかった。
好奇心と冒険心を伴い自然へと挑んだのだ。
その積み重ねの果て、メガミは人々を認め
人々もまたメガミの偉大さを認めた。
そして彼らはメガミに仕える戦士となった。
北限の番人・コルヌの戦士に。
旧い土地の記録から
さらなる情報が得られないだろうか?


知識判定:難易度13
適切:博物学


書物を探る中、よく似た文様を見つけた。
北限の石碑に遺された文様とのことだ。


かつて北へ挑んだ挑戦者たちは、
メガミに認められ石碑への
傷を以て己を刻んだという。

西部における旧い伝承といえば、
常世郷花鳥の旅行記だろう。
人に扮した芸術のメガミ・トコヨと共に
各地を旅した舞踊家の話だ。
様々な記録や歴史から、
近しい情報を見いだせないだろうか?


知識判定:難易度13
適切:歴史


常世郷花鳥の名を贈ったのはトコヨだ。
その際に彼女は花鳥の衣装に
文様を縫い付けたという。
その文様はあなたの求めるものに似ていた。
それだけではない。
花鳥の旅行記で書かれた詩の中に現れる
『仮面の預言者たち』という存在が
あなたは気になった。
かつてこの地に災厄が起きた時、
各地に現れ、悲劇を抑えた英雄たち。
それはつまり花鳥の時代から見ても
なお昔、より旧い原初の時代の話だ。
この地の中央、咲ヶ原の伝承といえば、
陰陽本殿に伝わる『花隠れ』だろう。
桜花決闘の起源を伝えるとともに、
主神ヲウカ信仰の主柱でもあった伝承だ。
しかし近年は新しい桜花決闘の動き、
桜花拝宮司連合の一部派閥の動き、
そして暁星塾の学者の研究などにより、
その信憑性が薄れつつある。
ここはまさにひざ元だ。
『花隠れ』や主神ヲウカに関しては
多くの資料があるだろう。
伝承の歴史を調べてみよう。
知識判定:難易度13
適切:歴史


いくつもの『花隠れ』関連の文献を
読み漁る中、よく似た文様を見つけた。
殊更に古い文書の末尾に描かれている。

……まるで署名のようだ。
これはメガミの名前なのだろうか?


稲鳴に関しては
稲鳴の民自身の文献が少ない。
資料は近隣の大家による
研究が大半だろう。
文明や文化の発展から幾ばくかの
変化こそしているものの、
民たちは今日でも自然を尊重し、
原始的とも言える暮らしをしている。
稲鳴といえば千洲波とも近い。
彼らの古い営みや土地の記録に
何かしら糸口があるだろうか?

知識判定:難易度13
適切:博物学


研究資料を漁った結果、
稲鳴から出土された古い土器に
近似した模様が見出された。

模様の描かれ方から、
その模様は尊く扱われていた。
そう感じられる。

かつての赤東、赤南あたりの東部は
今とは異なり人の営みが乏しい。
今日の繁栄は英雄・龍ノ宮一志による
ここ数十年の結果だからだ。
ゆえに文献は少ない。
だがメガミと人の関わりとして
語られる英雄譚のひとつ、
『火神薬事』は有名だ。
はるか旧い時代、
病に侵された家族を助けるために
薬に必要な火の神の力を求め、
メガミへと挑んだという。
英雄は挑戦へと勝利し、
メガミと絆を結んだ。
そして証として身体へと
標が贈られた……そんな伝承だ。
蟹河の風土記は充実している。
古い時代に主神ヲウカが顕現し、
桜花拝宮司連合が主に活動した
地域と言うこともあるだろう。
例えばこの書庫がここにあることも
その結果のひとつと言える。


だが、今のあなたから見れば
内容はどこまで信ずるべきか疑問だ。
蟹河の功績を強調し、桜花拝の偉大さを
伝える内容はあまりにも多い。
無論、桜花拝の歴史は深い。
十分な知性と共に調べるならば
意義はあるだろう。

精神or知識判定:難易度10
適切:直感
準適切:歴史

…………おや?
いくつかの書物に栞が
挟まれている。

それらの頁に絞って調べると、
殊更に主神ヲウカ、
そして桜花拝と蟹河を礼賛する内容が
凝縮されていた。
この栞を用いた人物は半ば狂信者と
呼べる水準で主神ヲウカへと
心酔していたに違いない。

呆れながら眺めていると、
趣の違う書が現れた。
これは……文様が記された書だ。
しかし、あまりにも難解な内容だ。
少なくとも栞のあった頁は
覚えておいたほうが
いいかもしれない。

芦原の歴史は海の歴史だ。
近年では海の漢祭が盛んだ。
古い時代も海のメガミ・ハツミとの
関わりを中心とした逸話が目立つ。
身体判定:難易度16
適切:怪力、頑健


そういえば最近行っていない。
ハツミ様が顕現した噂もあるし
来年は久方ぶりに参加しようか。
フンッ、ハァッ、ソイヤ!
あなたが肉体美について
思い返していると、
筋肉の運命に導かれたかのように
あなたの目を引く頁が見つかった。
海底の調査録にあった石碑の資料だ。



この石碑は……すごいぞこれは。
あの文様のような模様だらけだ。
……この文様は文字なのか?

煙家といえば温泉や鉄工の歴史だが
はてさて……?


精神or知識判定:難易度12
適正:直感、歴史


そうだ。そういえば千洲波により
皆殺しにされたのは煙家の商人だった。
当時の記録があるかもしれない。

やはりだ。
商船から石板が発見されている。
商人はもしかすると、この石板の
ために殺されたのかもしれない。
『一人目』もこの石板に刻まれた
『内容』について不思議と
心当たりを感じているようだ。

旧い時代のメガミたちについて、
その記録を残された限りで遡ろう。


最も古いと見なされているメガミは
最古の三柱と呼ばれるメガミたちだ。
そのうちの一柱が主神ヲウカ。
桜花結晶の生成を司るメガミだ。
二柱目は歴史と伝承のメガミ・カナヱ。
空間を越え万事を見通す仮面を持ち、
語り部として人の前に姿を現すらしい。
あなたもその噂は聞いたことがある。
そして最後の一柱だが、記録がない。
桜花拝に『最古の三柱』と記され、
カナヱもそう自称するゆえに
もう一柱いると類推されているだけだ。
ヲウカと対をなすメガミ・ウツロだと
推測する人々もいるが、
ウツロ自身が自称したこともなく、
いずれにせよ確信に至っていない。
次に古いメガミたちは、
人との関わりの記録や、本人たちの
自称を鑑みるに自然や原初的な感情に
紐づくメガミたちが多い。
そして彼女たちの記録が辛うじて
残されるような時代では、
彼女たちと人々との関わりは
今のように安定してはいなかった。
所によっては敬愛され、賛美され、
所によっては親しまれ、盟友となり、
所によっては恐れられ、畏れられる。

彼女たちはこの地の各地で
それぞれ独自の関係性を築いていた。


後に主神ヲウカの御力と人々の発展から
人間とメガミの関わりはゆっくりと
安定したものへと変化した。
書にはそのように纏められていた。
もうそれについては調べた。



決闘に関する書架にあなたが向かうと
どこかから寝息が聞こえてきた。
まさかこの書庫で居眠りをする輩が
いるのだろうか。
声の方に向かってみると
すやすやと眠る武神がいた。
うわあ。

精神判定:難易度12
適正:瞑想


あなたが愕然としていると、
気配を感じ取ったのか、
ユリナが瞳を開いた。

「ふぁああ……ふぇあ!?
 だ、誰ですか!?」


明らかに寝ぼけている。
やばい。
武神の刃が容赦なくあなたを襲う。

この一撃を書架に当てると
とんでもないことになる。
どうにか受け止めるしかない……!

あなたが驚愕のあまり
慌てふためいていると
気配を感じ取ったのか、
ユリナが瞳を開いた。
「ふぁああ……ふぇあ!?
 だ、誰ですか!?」


明らかに寝ぼけている。
やばい。
武神の刃が容赦なくあなたを襲う。

この一撃を書架に当てると
とんでもないことになる。
どうにか受け止めるしかない……!

書架を守り、必死に説得すると
どうにかユリナは目を覚ましたようだ。
あなたは彼女から切実な謝罪を受ける。
……めったにない体験だ。
噂には聞いていたが彼女は話しやすい。
あなたは自分の目的について
彼女に話し、相談した。

「わたしたちもその剣のメガミについて
 調べるためにここに来たんですよ。
 びっくりしました」

「あなたもわたしと同じところに
 目を付けたみたいですね。
 桜花決闘を気にしてくれて
 なんだか嬉しいです」
「そうだ。たぶん関係しそうなことが
 書いてあった本があったんですよ。
 ちょっと待ってくださいね!」

そう言って彼女は眠っていた机に
散らかった本から1冊を取り出した。


それは主神ヲウカが自ら定めた、
桜花決闘の制定に関する記録だ。
確かに次のような記述があった。

「万象巡らす勾玉、
 名を刻む紅き剣、
 同胞の天つ空結びし鏡、
 誓約によりその力を禁ず」
気になる記述は多い。
この3つの武器は関係があるのだろうか。
だがまずは何よりも『紅き剣』と
明記されている点は見逃せない。
紅の剣はかつてヲウカの時代の
桜花決闘で意図的に禁じられていた。
つまり……主神ヲウカは剣のメガミを
知っていたのだろうか……。
「どうですか。これは中々に
 重要な情報だと思いませんか?」


「シンラさんもまだまだ甘いですね!」



自慢げに語る少女はメガミとは思い難い。
しかし先ほどの一撃から感じた圧は
人間離れしていたと思い返す。

するとそこで、他の足音が近づいてきた。
振り返ると、また驚くこととなった。


「んもう。どこ行ってたんですか
 ユリナさんっ!」


今日はどういう日なんだ……?
ホノカ。ユリナと共に桜花決闘を
支えるメガミだ。ユリナを探して
いたのか、2柱は話し込む。
あなたが驚愕して黙っていると、
ホノカが話しかけてきた。
ユリナが取り持ってくれたようだ。

「ユリナさんが色々ご迷惑をおかけして
 本当にごめんなさいっ!
 あの……折角なのでよろしければ
 情報交換をしませんか……?」
彼女を信用するならば確かに有益だ。
どうだろうか。
色々と見せてみようか?

「わぁっ! 千洲波に潜入するなんて、
 すごいですねっ!」


「……ええっと、この文様ですが、
 一応、私は知っています。
 前に教えられたことがあるんです」

「古いメガミ……例えばヲウカさんの
 使っていた言葉らしいです」


「今ではほとんど失われていますが、
 桜花拝のごく一部の方がヲウカさんに
 直接教えられて、少しだけ使えた。
 偉大なる言葉……らしいです」
「でも……ちょっとわたしは
 読んだりはできないんです。
 お役に立てなくてごめんなさい……」

「桜花拝の人たち、いい人も多いけど
 難しいお話も多くて……、
 ぽわぽわちゃんも大変なんです。
 分かってあげてください」
「あ、この文様の意味は
 教わったのを覚えています」


「特に偉大な文様らしくて……
 『桜』を意味するらしいです」


「そうですか……。
 残念ですけど、
 頑張ってくださいね」

もう彼女たちはこの辺りには
いないようだ。


この書庫そのものを調べてみよう。
桜花拝宮司連合は秘密主義だ。


果たして、桜花拝随一と目される
この書庫がただの書庫で
終わるだろうか?

技巧or精神or知識判定:難易度15
適切:見抜く、直感
準適切:博物学

あなたは書庫に誂えられた
細工の文様が動くことに気づいた。
文様の周囲には桜を表す
意匠が敷き詰められている。
近くの本棚に埃がほとんどない。
何か意味がありそうだ。
心当たりがあったら
もう一度調べてみよう。
見つからなかった……。しかし何かが
隠されており、重要だと感じる。


メモ:次のこの判定では+2して
判定できる。失敗するたびに累積する。


あなたは細工を動かし始めた。
※ 合計4回、正しくタップせよ。
※ 成功したら後戻りはできない。

細工を動かし終えると
本棚が動き出す。
隠し通路だ。
あなたは意を決し、進むことにした。
どうやら誤っていたようだ。
この通路の通り方を知っている
ような人物が痕跡を残して
いたりしないだろうか?
あなたは知人から
今の状況を聞くことができた。


驚くべきことに4柱ものメガミが
この書庫を訪れているようだ。
ただ友好的であり、敬意をもって
接すれば問題はないだろう。
しかし懸念もある。
この書庫の管理人である
正村正吾(まさむらせいご)
という男だ。
彼は桜花拝において、
かつてのヲウカを
第一に掲げる派閥の筆頭である。

桜花拝における蟹河の歴史に心酔し、
蟹河の風土記を眺めるのが趣味らしい。
そしてその歴史を生んだ主神ヲウカにも
心酔しきっているようだ。
メガミ達の来訪に伴い、
その男の気が立っているようだ。
彼の使役する精霊が警邏しており、
部外者には容赦しない腹積もりのようだ。
部外者……即ち自分たちのことだ。
あまり時間をかけるのは
危険かもしれない。

もう知人からは話を聞いた。
流石に彼も迷惑だろう。


隠し部屋は奥に続いている。



しばらく進んだところで、
黒い精霊があなたたちに
襲い掛かってきた。
あなたを警戒しているようだ。
精霊たちを倒すと、
奥から威圧感と共に
一柱のメガミが現れた。

「……誰?」



桜花結晶の塵化を司るメガミ・ウツロだ。
答えを間違うと、ただでは済まないだろう。
慎重に言葉を選び、事情を説明する。

「……そう。
 ごめん、正村たちかと思った。
 ……ん。ついて、きて」

納得してもらえたようだ。
彼女に従い奥へと進むと、
そこにはもう一柱のメガミがいた。

あなたはシンラを宿しているか?



「おやおや、よもやここで
 あなたとお会いすることになるとは」


「あなたの知性はこの地を
 より良き姿へ導く礎となります。
 いつも頼りにしていますよ」

「……あなたの目的も
 私たちから遠くはなさそうですね
 ……いえ、」

「もしかしたら、あなたたちこそが
 この物語を、一本の線へと繋ぐ
 者たちなのかもしれませんね――」

「…………」



「いいでしょう。
 知りたいことを話して御覧なさい
 この中には中々の秘密があり、
 そして私の知識もあります」
彼女の知恵は本物だ。
渡りに船という他ないだろう。
あなたは自身の知る情報を
彼女へと伝えた。
「まさか私ども以外に
 この秘密書庫を訪れる
 方々がいるとは思いませんでした」

「あなた方がここに至る
 そこまでの因果には
 説明しがたき巡り合わせを
 感じずにはいられませんね」
「……いえ、そうですね」



「もしかしたら、あなたたちこそが
 この物語を、一本の線へと繋ぐ
 者たちなのかもしれませんね――」

「いいでしょう。
 知りたいことを話して御覧なさい
 この中には中々の秘密があり、
 そして私の知識もあります」
シンラの知識は本物だ。
妄信することはありえないが、
あなたの目的のためには
力を借りない選択肢もないだろう。
あなたは自身の知る情報を
彼女へと伝えた。


「……なるほど。そうですね。
 装具に見られた模様については
 お教えしましょうか」

「これは私たちメガミの名です。
 メガミとして目覚めたメガミは
 その意識が目覚めた時から
 己の名を自覚しています」
「そして名はいわゆるこの地の
 言葉ではなく、この文様にて
 与えられます」

「例えばこれで……
 どう読むと思いますか?」


「その通りです」



「目覚めた時、私は無意識的に
 これは『シンラ』だと理解しました。
 ですがこの文様の構造そのものは
 当時は理解できませんでした」
「ゆえにメガミであれば即ち
 この文様を読めるという
 わけではありません」

「旧い時代のメガミたちは
 人々との関わりが不安定でしたから、
 この名である種の『署名』を残す
 文化があったようですね」
「尤も、私が生まれた頃には
 もはやその文化は衰退しています。
 私はメガミとしては
 年若いほうですので」
「例外はメガミ成りですね。
 人の頃の名がありますので。
 近年は別の例外も
 いくつか見られますが」
「さて、しかしこの文様は
 ただの名ではなく、
 『文字』でもあります」

「これを文字として使っていた
 者がいますからね。
 あなたならば、
 心当たりがあるのでは?」
「どうやら、
 死にたいようですね」


ゲームオーバー



「ほう。買い被りますね。
 私は『使っては』いませんよ。
 それに私が全て教えては
 あなたを測れないでしょう?」
「私が言っているのは
 ヲウカのことです」


「ヒミカにそのような
 知能はありませんよ。
 旧いメガミですから、
 『署名』はあるでしょうが」
「私が言っているのは
 ヲウカのことです」


「その通りです。
 最古の三柱、主神ヲウカ。
 彼女は桜花拝でこの『文字』を
 用いた形跡があります」
「……? 予想外ですね。
 心当たりがあるのですか?」


「ま、これを読み解いたメガミが
 私だけとは限りません。
 彼女ほどのメガミならば、
 可能性はありますね」
「私が言っているのは
 ヲウカのことです」


「彼女は秘密により人々を
 支配していた側面があります」

 
「限られた者のための、
 メガミに連なる権威ある文字。
 お誂え向きだったでしょうね」

「他人に読まれないように
 こっそりと何かを書くのに
 実に便利でしょう?」

「ここで重要なのは、
 ヲウカはこれを初めから
 『文字』として
 正確に理解していた点です」
「署名よりもさらに旧い、
 最古のメガミたちにとって
 これは『文字』であった。
 そのように類推できます」
「もしあなたたちが、
 さらに先を求めるならば
 この物語を繋ぐ者たちならば」

「追うべきは一柱でなく、
 旧き原初の時代の
 メガミたちかもしれませんよ」

「さて、私はこれにて失礼。
 愚昧なヲウカ信者は
 私が釘付けておきますので、
 あなたは存分に調べなさい」
様々な情報を残し、
シンラとウツロは去っていった。
彼女らの厚意を無駄にはできない。
ここにある書を調べよう。
…………
…………
…………

あなたは書物を調べ終えた後、
密かに書庫から退散した。
特に問題はなかったと言える。

そして今、
あなたたち2人はとある場所へと
向かっている道中にある。

その動機は無論、先の書物にある。
2つ、特記すべきことがあった。


まず1つ目。
より旧い時代における
最古の三柱、主神ヲウカの真実だ。

それによると元来、
ヲウカとウツロはひとつの存在であり、
ウツロの権能を疎んだヲウカが
ウツロを切り離したらしい。
これだけでも桜降る代に住まう
あなたにとっては驚くべきことだ。
その上で2つ目、ある書物の一頁だ。

3つの象徴武器が図解されている。
『勾玉』『剣』そして『鏡』だ。


勾玉こそがヲウカの象徴武器、
『桜花勾玉(おうかのまがたま)』
今の旗と鎌は勾玉が2つに分かれた
姿に過ぎないらしい。
ひとつであった頃の
その武器の成す権能は桜花結晶の
生成と塵化、その全てを司って
いたとのことだ。
さらに『剣』の風貌はあの剣に違いなく、
『鏡』もまた、昨今の桜降る代では
胡乱な噂が絶えない代物だ。

だが『勾玉』の委細と違い、
『剣』と『鏡』の成す権能はまるで
書かれてはいない。まるでヲウカが
厳重に隠していたかのようだ。
最古の三柱、主神ヲウカ。
そして並び立つ3つの象徴武器。
……これは偶然ではないだろう。

そして、
あなたたちには心当たりがあった。
かの『最古の三柱』に
直に会ったことがあるという友人に。
以前は世迷言と流したが、
今はそうは言えないだろう。
……会いに行く必要がある。

こうしてこの旅路は、
最後の『あなた』へとたどり着く。


旧き社へと導かれ、
神語りを聴いた――
『三人目』の物語が始まる。