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本作の10周年ページにお越しいただきありがとうございます。BakaFireです。本作『惨劇RoopeR』シリーズや『桜降る代に決闘を』シリーズなど同人アナログゲームのデザイナーとして活動しております。近年にはディライトワークス様からのお仕事として『Fate/stay night』を題材にしたボードゲーム『Dominate Grail War』のゲームデザインも担当させて頂きました。
『惨劇RoopeR』の発売と共に私のゲームデザイナーとしての人生は始まりました。折角の機会ですので本作を中心に据えつつ、私個人の10年間の活動について振り返らせていただきます。私事を語るようで恐縮ではございますが、ささやかな自伝を読むような心持でお付き合いいただけると嬉しい限りです。
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本作の最初の最初はコピー用紙に印刷しただけのα版を10部だけ頒布し、当時はそれで終わらせるつもりでした。しかしありがたいことにそこから大きな反響を頂き、本格的にボードゲームとして取り組むことにしたのです。当時に本作へのお言葉を頂いた皆様に改めてお礼申し上げます。
その後半年を経て最初のバージョンである『惨劇RoopeR』が発売しました。当時のゲームマーケット2011秋に100部を完売するか不安そうに持ち込んだのは懐かしい話です。
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それから1年間は本作の再版と拡張に邁進していました。その間に出たのが『拡張1 Mystery Circle』と『拡張2 Haunted Stage(旧版)』です。
ゲームデザイナーとしては1年強を通して様々なボードゲームに触れた刺激をもとに新作『終わった世界と紺碧の追憶』を頒布しました。
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最初の『惨劇RoopeR』は初めて作ったゆえに力不足が目立ちました。そこで1年半の学びを踏まえて作り直した一作が『惨劇RoopeR Χ』です。初心者への導線にあたるFirst Stepsや脚本ごとにキャラクターを変えられる仕組みなど今日での多くの要素がここで追加され、このバージョンをもって胸を張って世に出せる品質に至ったと考えております。
プレイヤー参加型のイベントとして脚本コンペティションも開催いたしました。当時に多数のご応募を頂いた皆様にお礼申し上げます。
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コンペティションの入選作を収録した脚本集が発売しました。多数の脚本が収録されただけでなく、魅力的な脚本を作るためのノウハウも掲載されています。
しかし拡張は第1作の『拡張1:Mystery Circle』を除き、私の未熟さゆえに成功していませんでした。複雑さへの歯止めが効かず、独りよがりな方向へと向かってしまっていたのです。そこで拡張の考え方や作り方を見直しました。その成果となる一作が『拡張0 Midnight Zone』です。
Z-MAN Games様より英語版も発売し、ありがたいことに海外でも好評を頂けました。翌年の話となりますが、Dice Tower Award 2014ではMost Innovative Game(最も革新的なゲーム賞)を受賞しました。
ゲームデザイナーとして世界に羽ばたく成功の年というと聞こえはよいですが、私個人としてはスランプにも陥っていました。『惨劇RoopeR』は成功し、『終わった世界と紺碧の追憶』もそこそこ成功していましたがそれに続く作品が成果を出せず、いわゆる一発屋の影がちらつく時期でもあったのです。
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2014年の努力が実って拡張の開発も上手く行くようになりました。『拡張2A Haunted Stage』と『拡張2B Weird Mythology』はどちらも魅力的な仕上がりだと今も評価しています(特にWeird Mythologyは白眉の出来です)。
ゲームデザイナーとしてはスランプを脱出するために自分の理想を整理し続け、水面下でひとつの作品を作り続けていました。
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5周年を記念し、『惨劇RoopeR Χ』に残されていた幾つかの不満点の解消とキャラクターの追加を果たした現行版『惨劇RoopeR 5th』を発売しました。こちらにはもう目立った不満点はありませんので、改めて10周年で作り直す必要は感じていません。
そして2016年は私の人生を大きく変えた年でもありました。1年半をかけて作り上げた『桜降る代に決闘を』が発売し、大変ありがたいことに大ヒットしたのです。
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ここからしばらくは『惨劇RoopeR』に関する活動をあまり行えませんでした。『桜降る代に決闘を』が大きな成功を収めたために、『惨劇RoopeR』に手が回らなかったのです。
もちろん拙作をご評価いただいたのはありがたい限りであり、『桜降る代に決闘を』を愛してくださる皆様には感謝しかございません。しかし一方で物理的時間の限界、さらに掘り下げるならば今の生き方の限界もまた避けがたいものだと痛感していました。
特に当時に開催していた全世界脚本コンペティションが完遂まで3年以上かかってしまったことは私の人生で最も反省すべきことのひとつです。改めてお詫び申し上げるとともに、ご応募いただいた全ての方にお礼申し上げます。
そのような状況を見てご助力頂き、さらに2018年から2019年の間は舞台版に向けた宣伝も兼ねて本作のコンベンションを開催して頂いた舞台版スタッフの皆様にも改めての感謝をお伝えします。
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舞台版『Be Playing Stage Game』が公演されました。コロナ禍が本格化する直前にぎりぎり間に合ったのは幸運というほかありません。原作者として拝見させて頂き、とても素晴らしい仕上がりでした。細かくは特設されたページにて語っております。それと併せて全世界脚本コンペティションの入選作が収録された『惨劇RoopeR脚本集Ⅱ』も発売しました。
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そして本年、本作は10周年を迎えます。新型コロナウイルスの影響ゆえにアナログゲームを主とした活動は難しい一年であったため、今日に至るまで特筆すべき活動はできませんでしたが、ゲームマーケットにて大型の新作拡張を発売し、今後の情勢次第ではさらなる試みも続けていく次第です。
本作は一つの周期を終えました。新作は出し惜しみせず温めていた全てを出し尽くしており、次のアイデアも今のところはありません。しかし全霊を尽くすことは新たな始まりと次のひらめきに繋がると信じております。これからも本作をお楽しみいただければ嬉しい限りです。
ゲームデザイナーとしては、2018から2019年に痛感していた悩みにまだ答えを出せていません(というより、コロナ禍というそれ以上の問題に覆い隠されてしまっていたと言うべきでしょうか)。今回の新作は全ていち同人作家としての情熱に基づいていたために遮二無二走り抜けましたが、それが明けたら改めて向き合う必要があるでしょう。
2022年以降も私は皆様に楽しい体験をお届けし、それを通して創作欲求を満たし続けられるように生きていくつもりです。細部においてどのような生き方を選ぶかはまだ分かりませんが、お付き合いいただければそれ以上の喜びはございません。